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不動産を売ったお金、預金のままで大丈夫?一時払い終身保険で始める資産形成と相続対策

「実家を売却して、まとまったお金が通帳に入った。ありがたいけれど、このまま普通預金に置いておいていいのだろうか……」

不動産の売却をお手伝いしていると、お引渡しのあとにこうしたご相談をいただくことが少なくありません。数百万円から数千万円という金額が一度に入ってくるのは、多くの方にとって人生で初めての経験です。うれしさよりも、むしろ不安のほうが大きい。そのお気持ちは、とても自然なものだと思います。

この記事では、不動産売却などでまとまった資金を手にした方に向けて、一時払い終身保険(保険料を契約時に一括で払い込み、一生涯の死亡保障を持つ保険)という選択肢を、千歳市で不動産業を営む宅建士・行政書士・FP(ファイナンシャルプランナー)の立場からご紹介します。

この記事で分かること

  • 一時払い終身保険の仕組みと、いま注目されている理由
  • 売却資金の一部を保険に替えることで得られる、相続対策としてのメリット
  • 加入前に必ず知っておきたい注意点

一時払い終身保険とは?仕組みを1分で理解する

一時払い終身保険とは、その名のとおり保険料を契約時に1回でまとめて支払う終身保険です。終身保険とは、保障が一生涯続き、亡くなられたときに死亡保険金が受取人に支払われるタイプの生命保険を指します。

月払いの保険と比べたときの特徴は、大きく3つです。

◆ 一時払い終身保険 3つの特徴

  • 支払いは最初の1回だけ:以後の保険料負担はなし。一般に、月払い・年払いと比べて払込保険料の総額は少なくなる傾向
  • 解約返戻金(かいやくへんれいきん)がある:途中解約でお金が戻る貯蓄性のある商品。ただし契約後の一定期間は元本割れの期間がある点に注意(後述)
  • 加入のハードルが比較的低い:契約当初の保障額が払込保険料と同程度のタイプでは、一般に健康の告知が不要か簡易な内容で済むことが多い

加入できる年齢の幅も広く、たとえば日本生命の「ニッセイ一時払終身保険」では3歳から90歳まで加入が可能です。「もう年齢的に保険は無理」とあきらめていた方にも、選択肢が残されているわけです。

まとめると、一時払い終身保険は「死亡保障を持ちながら、お金を家族に渡しやすい形に整えておく商品」とイメージしていただくのが近いと思います。

なぜ今、一時払い終身保険が注目されているのか

実はこの商品、ここ数年で急激に見直されています。背景には2つの大きな流れがあります。

理由1:不動産を使った相続税対策が厳しくなった

2026年4月に配信された税理士ドットコムの記事(Yahoo!ニュース)では、次のような動きが紹介されています。

2024年に区分所有マンション、2026年には貸付用不動産について相続税評価の方法が見直され、いわゆる「タワマン節税」に代表される不動産を使った節税スキームの効果が大きく抑えられました。かつての節税の王道が使いにくくなるなかで、資産防衛に関心の高い層のあいだで一時払い終身保険への「回帰」が起きている、という内容です。

象徴的な数字として、同記事では毎日新聞の報道を引くかたちで、日本生命の一時払い終身保険「マイステージ」の2025年度上期(4〜9月)の販売件数が約9万8,700件と、2020年度上期の約50倍に増えたことが紹介されています。

不動産のプロの立場から補足すると、この評価見直しは「不動産がダメになった」という話ではありません。節税だけを目的にした不動産保有の妙味が薄れた、ということです。だからこそ「使っていない不動産は良い条件のうちに売却し、その資金を計画的に組み替える」という流れが強まっている、と現場では感じています。

理由2:金利上昇で「増える力」が戻ってきた

長く続いた低金利の時代、一時払い終身保険は利回りの低さが弱点でした。ところが最近の金利上昇を受けて、大手生保各社は予定利率(保険料の計算に使う運用の前提利率)を相次いで引き上げています。前述の記事によれば、たとえば日本生命は2025年9月に予定利率を1.00%から1.50%へ引き上げました。

予定利率が上がると、同じ死亡保険金を確保するための保険料が下がります。言い換えれば、同じお金で以前より大きな保障を持てるようになったということです。「保障を持ちながら、預金より少し働いてもらう」という使い方が、以前より現実味を帯びてきました。

※予定利率や保険料は改定されることがあります。検討時点の最新の数値は必ず各社の資料でご確認ください。

不動産売却資金の一部を保険に。3つのメリット

では、売却で得た資金の一部を一時払い終身保険に組み替えると、暮らしと相続はどう変わるのでしょうか。メリットを3つに整理します。

メリット 1「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使える

死亡保険金には、相続税の計算上、「500万円×法定相続人の数」まで非課税という枠が設けられています(法定相続人とは、配偶者やお子さまなど、法律で相続する権利が定められた人のことです)。

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の計3人なら、500万円×3人=1,500万円までの死亡保険金には相続税がかかりません。

ここが重要なポイントです。同じ1,500万円でも、預金のまま遺せば全額が相続財産として課税対象になります。一方、保険という形に置き換えておけば、この枠の範囲内は課税対象から外れます。お金の置き場所を変えるだけで使える、どなたにも認められた仕組みです。

◆ 専門家として必ずお伝えしている注意

非課税枠を使うには、契約者(保険料を払う人)=被保険者(保障の対象になる人)=親御さんご本人、受取人=法定相続人という契約形態にする必要があります。契約形態を間違えると、相続税ではなく贈与税や所得税の対象になり、かえって税負担が重くなるケースがあります。加入前の設計が肝心です。

メリット 2「渡したい人」に「確実に」「すぐ」渡せる

死亡保険金は、受取人固有の財産として扱われます。つまり、原則として遺産分割協議(相続人全員でだれが何を相続するか決める話し合い)の対象になりません。あらかじめ受取人を指定しておくことで、「この子に確実に遺したい」という思いを形にできます。

また、相続が発生すると故人名義の預金口座は一時的に凍結され、自由に引き出せなくなるのが一般的です。葬儀費用や当面の生活費、相続税の納税資金(相続税は原則、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に納付が必要です)に困るご家族は少なくありません。死亡保険金は、所定の手続きを経て現金で速やかに受け取れるため、この「お金が動かせない期間」の備えになります。

不動産を多く遺す場合ほど、この点は効いてきます。土地や建物はすぐに現金化できないからです。「不動産は不動産で遺し、納税や当面の資金は保険で現金として用意しておく」という組み合わせは、資産に不動産の多い北海道のご家庭と相性の良い考え方だと感じています。

メリット 3解約返戻金があるので「使う」選択肢も残る

一時払い終身保険は、亡くなるまで一切使えないお金ではありません。一定期間の経過後であれば、解約して解約返戻金を受け取り、老後資金や介護費用に充てるという柔軟性も残されています。「遺すことも、いざというとき使うこともできる」という二面性が、預金とも投資とも違うこの商品の持ち味です。

具体例:実家を売却した70代のケースで考える

イメージしやすいように、モデルケースで見てみましょう。

◆ 前提

  • 千歳市在住・75歳の女性Aさん。ご主人は他界、相続人はお子さま2人
  • 空き家になっていた実家を1,800万円で売却し、諸費用等を差し引いて約1,600万円が手元に

Aさんの死亡保険金の非課税枠は、500万円×2人=1,000万円です。

そこで、売却資金のうち1,000万円で一時払い終身保険(受取人はお子さま2人)に加入し、残りの約600万円は当面の生活費・医療費として預金に残す、というプランを組んだとします。この場合、一般に次のような効果が期待できます。

  • 保険にした1,000万円分は、非課税枠の範囲内であれば相続税の課税対象から外れる
  • お子さま2人それぞれを受取人に指定でき、遺産分割の話し合いを経ずに現金が渡る
  • Aさんに万一のことがあった際、口座凍結中でも葬儀費用等をまかなえる

※実際の税額への影響は、財産の総額や基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)との関係で変わります。上記はあくまで仕組みの説明であり、個別の試算は税理士等の確認が必要です。

大切なのは、「全額を保険にしない」ことです。手元の流動性(すぐ使えるお金)を確保したうえで、当面使う予定のない部分だけを組み替える。これが基本の考え方になります。

加入前に必ず知っておきたい4つの注意点

メリットの大きい商品ですが、向き不向きと注意点があります。誠実にお伝えします。

1. 元本割れの期間がある

契約から日が浅いうちに解約すると、解約返戻金が払い込んだ保険料を下回るのが一般的です。「近いうちに使うかもしれないお金」を充てるのは避けるべきです。

2. 契約形態を間違えると税金が変わる

先ほど触れたとおり、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、相続税・贈与税・所得税のどれが課されるかが変わります。ここは自己判断せず、必ず専門家に設計を確認してもらってください。

3. 生命保険料控除は払い込んだ年しか使えない

保険料を一括で支払うため、所得税の生命保険料控除(年末調整や確定申告で使える所得控除)は、払込みをした年のみの適用となります。

4. インフレへの備えは別途考える

円建ての一時払い終身保険は、契約時に将来受け取る金額の目安が決まるタイプが中心です。物価上昇局面では実質的な価値が目減りする可能性もあるため、資産全体のバランスの中で位置づけることが大切です。

一時払い終身保険が向いているのは、一般に「当面使う予定のないまとまった資金があり、相続税の課税が見込まれる、またはご家族へ確実にお金を遺したい方」です。逆に、手元資金に余裕のない方が無理に加入すべき商品ではありません。

まとめ:売却は「ゴール」ではなく、資産を整える「スタート」

  • 一時払い終身保険は、保険料一括払いで一生涯の保障と貯蓄性を併せ持つ商品
  • 不動産節税の見直しと予定利率の引き上げを背景に、いま再び注目が高まっている
  • 「500万円×法定相続人の数」の非課税枠により、預金のまま遺すより相続税の面で有利になり得る
  • 受取人指定で「渡したい人に、すぐ、確実に」現金を遺せる
  • 元本割れ期間や契約形態など、注意点は専門家と一緒に確認を

不動産の売却は、長年守ってきた資産を次の形に変える大きな節目です。だからこそ、売って終わりではなく、入ってきたお金をどう守り、どう遺すかまで含めて初めて「良い売却」だったと言えるのだと、私たちは考えています。

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