「親が施設に入って、実家が空き家になった」
「相続した家に誰も住む予定がない。でも、思い出のある家を手放す決心もつかない」
空き家のご相談は、たいていこの状態から始まります。
総務省の住宅・土地統計調査(令和5年)によると、全国の空き家は約900万戸と過去最多。総住宅数の13.8%、およそ7戸に1戸が空き家という計算です。空き家はもはや特別な家の話ではなく、「どの家にもいつか訪れる可能性のある問題」になっています。
千歳市も例外ではありません。ラピダス社の立地で土地利用が活発になる一方、高齢化は進んでおり、市も「空き家の総合サイト」を公開して対策に力を入れ始めています。
この記事で分かること
- 空き家を放置すると何が起きるのか(法律・税金・北海道特有のリスク)
- 「売る・貸す・活かす・壊す」4つの選択肢と判断軸
- 売却するなら知っておきたい税金の優遇制度(3,000万円特別控除)
- 千歳市・北海道で使える公的な仕組み
空き家を「とりあえずそのまま」にすると起きること
「管理不全空家」に指定されると固定資産税が上がることも
2023年12月に空家等対策特別措置法(空き家に関する国のルール)が改正され、倒壊の危険がある「特定空家」の一歩手前でも、市区町村が「管理不全空家」として指導・勧告できるようになりました。
ここで重要なのが固定資産税です。住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」により、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。ところが、管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、この特例が解除され、土地の固定資産税が従来の数倍(条件により最大6倍程度)に跳ね上がる可能性があります。
◆ 押さえておきたい変化
「壊すと税金が上がるから残しておく」という従来の常識が、「管理せずに残しておくと税金が上がる」時代に変わった、ということです。
相続登記の義務化も他人事ではありません
2024年4月からは相続登記(亡くなった方から相続人への名義変更)が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料(行政上の制裁金。刑事罰ではなく前科はつきません)の対象になり得ます。過去の相続も対象です。
「名義が祖父のまま」という空き家は、売ることも貸すこともできません。空き家対策の入り口は、実は登記の確認であるケースが少なくありません。
北海道特有のリスク:冬が空き家を一気に傷めます
本州の空き家対策の記事ではあまり触れられませんが、北海道の空き家には冬という大敵があります。
◆ 北海道の空き家・冬の3大リスク
- 水道の凍結破裂:水抜き(配管内の水を抜く冬支度)を怠ると配管が破裂し、雪解けとともに家中が水浸しになることがあります
- 屋根からの落雪・雪庇(せっぴ):隣家や通行人への被害は、所有者の賠償責任問題に直結します
- 融雪設備の劣化:融雪機やロードヒーティングは、使わない期間が長いほど再稼働が難しくなり、撤去にも費用がかかります
実際の管理では、月1回程度の見回り・通風・水回りの確認に加え、冬前の水抜きと降雪期の雪の状態確認が欠かせません。遠方にお住まいの場合、この負担が想像以上に重くのしかかります。
空き家の選択肢は4つ。「感情」と「収支」を分けて考える
空き家の出口は、大きく次の4つに整理できます。
選択肢 1売る(現状のまま、または解体して更地で)
住む予定も貸す予定もないなら、最有力の選択肢です。千歳市は道内でも中古住宅の需要が比較的ある地域で、立地によっては古家付きのまま買い手がつくケースもあります。
一方、建物の傷みが激しい場合は、解体して土地として売る方が結果的に手残りが多くなることもあります(どちらが有利かはケースによります)。
選択肢 2貸す(賃貸として活用)
千歳市は転勤・転入の動きがある街なので、エリアと状態次第では賃貸需要が見込めます。ただし、貸すには一定の修繕が必要になることが多く、初期投資の回収に何年かかるかの試算が欠かせません。
「貸せば家賃が入る」の前に、「貸せる状態にするのにいくらかかるか」を先に見るのが順番です。
選択肢 3活かす(リノベーションして自分や家族が使う)
思い入れのある家を残したい場合の選択肢です。断熱改修や水回りの更新を含むリノベーションは、北海道では特に断熱・暖房計画が費用を左右します。
「新築より安く済むか」はケースによるため、リノベ費用と中古購入・新築の比較見積もりを取ってから判断するのが堅実です。
選択肢 4壊す(解体して土地として保有・売却)
老朽化が進んだ空き家は、解体が安全面でも税務面でも合理的な場合があります。前述のとおり、解体すると住宅用地の特例がなくなり土地の固定資産税は上がりますが、管理不全のまま勧告を受けても結局特例は外れます。
「解体費用+税負担の増加」と「維持管理費+リスク」を並べて比較することが判断の軸になります。
判断に迷ったら、この2つの問いから
- 5年後、この家を家族の誰かが使う具体的な予定があるか?
- 年間の維持費(固定資産税+管理費+冬支度)を、あと何年払い続けられるか?
1つ目がノーで、2つ目に負担を感じるなら、売却か解体を軸に検討を始めるのが一般的です。感情面の整理(思い出の品の片付け、家族間の合意)と、収支面の判断は、分けて進めると前に進みやすくなります。
売却するなら知っておきたい「空き家の3,000万円特別控除」
相続した空き家を売る場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得(売却益)から最大3,000万円を控除できる特例があります。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」といいます。
◆ 主な要件の概要(詳細は個別確認が必要です)
- 亡くなった方が一人で住んでいた家であること(区分マンションは対象外)
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却価格が1億円以下であること
- 耐震基準を満たす改修をして売るか、建物を取り壊して売ること(2024年以降の譲渡では、買主が翌年2月15日までに耐震改修または除却を行う場合も対象)
売却益が出るケースでは、この特例を使えるかどうかで税額が数百万円単位で変わることもあります。逆に、要件の一つである「相続から3年」の期限を知らずに逃してしまうご相談も実際にあります。空き家の売却は、タイミングそのものが税額に直結する、という点は覚えておいて損はありません。
※適用期限や細部の要件は税制改正で変わる可能性があるため、実行前に最新の情報をご確認ください(適用期限:2027年12月31日までの譲渡・要確認)。
千歳市・北海道で使える公的な仕組み
千歳市は「空き家の総合サイト」を公開し、空き家対策の情報をまとめています。所有者の立場で使いやすいものを挙げると、次のとおりです。
千歳市版・解体費用シミュレーター
空き家の解体工事の概算相場を手軽に確認できます。親族間で話し合う際のたたき台に向いています。
※概算相場は目安であり、傾斜地やアスベスト除去が必要な物件などは費用が大きく変わります。正式には現地調査による見積もりをご確認ください。
千歳市版・住まいの終活ナビ
解体費用に加えて、解体後の土地売却査定の相場まであわせて確認できます。「壊して売ったら手元にいくら残るか」の全体像がつかめるため、親族同士で話し合うきっかけづくりに向いています。
千歳市版・固定資産税シミュレーター
お手元の納税通知書の明細をもとに、空き家を維持する費用や、解体後に固定資産税がどれくらい上がるかの目安を試算できます。
千歳市版・空き家の迷惑度診断
お持ちの空き家が「管理不全空家等」に指定される可能性を、国のガイドラインに基づいて簡単に診断できます。前述のとおり、勧告を受けると住宅用地特例が外れて税負担が重くなるため、現状のリスク確認の目安として使えます。
これらの入り口となる千歳市の公式ページはこちら → 千歳市「空き家の総合サイト」
また、市は解体工事のプラットフォーム事業者と空き家対策の連携協定を結ぶなど(令和7年11月)、行政側の体制も動き始めています。こうした公的ツールで「おおよその数字」をつかんだうえで、実際の査定や税務の詳細は専門家に確認する、という二段構えが効率的です。
なお、解体やリフォームの補助金は自治体ごとに制度の有無・内容が異なり、年度予算の枠や着工前申請などの条件があるのが一般的です。工事を決める前に、最新の制度を必ず確認してください。
まとめ:空き家対策は「現状把握」から始まります
- ✔空き家は全国で約900万戸・7戸に1戸。放置は「管理不全空家」指定や固定資産税増額のリスクに直結
- ✔北海道の空き家は、水道凍結・落雪など冬のリスクが加わり、管理の負担が本州より重くなりがち
- ✔選択肢は「売る・貸す・活かす・壊す」の4つ。5年後の利用予定と年間維持費の2つの問いで方向性を絞る
- ✔相続空き家の売却には3,000万円特別控除という大きな税制優遇があり、期限管理が結果を左右する
- ✔千歳市の総合サイトやシミュレーターで概算をつかみ、詳細は専門家に確認する二段構えが効率的
空き家の問題は、「登記(法律)」「税金(お金)」「売却・活用(不動産)」が絡み合っているのが難しさの正体です。一つずつ別の窓口に相談すると、話が行ったり来たりして疲れてしまう方も少なくありません。
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